「チッ、アホらしい」

「晴菜が舌打ちした」


はぁー、と大きく息を吐いて机上にでこを乗せる。
寝よう。
どうせ朝のホームルームまで30分はあるし、予習もないし。


「え!晴菜寝ちゃうの!?起きようよ暇だよあたしが!」

「おやすみ」

「えー!」


完全に寝る体制に入った私を駄々っ子のごとく起こそうとする由宇。

シャーペンで腕をつついてきたり、髪の毛を一本だけ引っ張ったり………行動がやけに地味なんだけど気になる。

それを無理やり意識の外に追いやって、私は睡眠に逃げた。



―――
――――
―――――――…


ガバッと起きあがると、一限の授業が始まっていた。

黒板にはすでに小難しい数式がいくつか並んでいて、ああもう誰か起こしなさいよ。

失敗した、とうなだれていると、少し年をとったおじいちゃん先生が私に


「具合悪かったら、保健室に行っていいよ」


と、優しく言ってきたので、具合悪くないけどお言葉に甘えることにした。





ガラッと、保健室のドアを開けると、保険医はいなかった。

とりあえず利用者の名簿に名前を書く。

あとは理由。


理由……体調不良でいいか。
先生にもそう言っちゃったし。

カリカリと、シャーペンの芯が紙の上を滑る音だけが響いていたら



「……誰だ?」


低い声が後ろから聞こえた。