「今日から54ページの「青い砂」をやるよー」

新しい話か。青い砂って童話っぽい奴だったような。
アキが前に好き好んで読んで、俺に読ませてくれた。
アキ、哀しむだろうなぁ……

「そういえばさーセイ」
「何?」

授業が終わり、クラスメートのリンが話し掛けて来た。

「青い砂って実話らしいぞ?しかもこの辺りで起きた」
「んなバカな」
「だよな。俺も信じられないもん」

物語好きなリン。本当に唐突に物語の話題を振ってくる。
しかしこの噂が事実だと知るのはまだ先の話の事。
何時ものノリで学校が終わると、俺はまたアキ…いや、サクコと言うべきか。
どっちでもいい、兎に角奴のいる病院へと足を向けた。
アキに戻っている事を期待していたが、
相変わらずサクコのままだったからショックだった。

「えーっと、サクコだっけ?」
「はいっ、名前で呼んで下さるなんて嬉しいですわ」

本当に声も姿もあのアキなのに、
性格だけはサクコなんだよな…溜息が出てしまう。

「今日はどうだったんだよ」
「それが…本当に文明って凄いですわね」
「…は?」