だけど聞けば聞くほどに思う。…何故そこまで驚くのかがよく分からない。
あまりにも大袈裟過ぎるように聞こえるのだ。
主治医が出て行った後、タカエさんも出てきて俺にこう言った。

「ありがとう、セイ君。
ちょっとああなったのには驚いたけれど、一種の障害じゃないかって」

漸く納得しているようにも見えた。続けてタカエさんはこう言った。

「念の為、来る前にお母さんの方には電話をしておいたわ…
こんなに遅くなっているから、迎えに来て下さっているんじゃないかしら…?」

タカエさんに言われて漸く時計を見た。夜の10時30分を指していた。
高校生がこんな時間まで帰らないと流石に心配されるだろう。

「また明日も来ますね」

そう言い残して、その場を後にした。この出来事が夢であれば良いと思いながら。
タカエさんの言う通り、母さんが車で待っていた。
叱られると思いきや、真っ先にアキの事を聞いてきた。

「大丈夫だよ。大した事ない……多分」

最後の“多分”だけは、母さんにも聞こえないくらいに小さな声で呟いた。
本物の“アキ”が本当に大丈夫なのかは俺も知りたい。
ある意味一生忘れなさそうな誕生日だった。