何がどうなって文明が凄いに到達するのか、全く分からなかった。
ちゃんと筋道を立てて話せと言った。するととんでもない答えが返ってきた。
厠に行ったらやっぱり凄く変わっていただとか、
ご飯の時もスプーンやフォークに驚いたとか、
井戸がとても便利になっている事を実感しただとか、
今自分が使っているそのベッドも庶民の自分が使っていいのかとか。
ベッドはまだ分かるけれど、トイレやスプーンで驚くって一体…。
何処も珍しくないぞ、と言ってやれば更に驚いて。一体どの時代の人間なんだ?

「なあサクコ、お前何処の時代の人間?」
「妾は明治生まれですわ」

ああ、だからか。妙に納得してしまった。
…と、そんな場合ではなかった。気になることがあったんだった。

「どうしてサクコはそんなに元気なんだ?アキは重傷なのに」
「愚問ですわ。アキが負った傷をどうして妾が負わなければいけないのです?」

何でそんなにも不機嫌になるのか?俺には理解出来なかった。
いや、中身がサクコでもアキの身体だから…
そう言おうとする前に、サクコは続けてこう言った。

「傷はアキの痛み。妾の痛みではありません」

そんなもの、なのか……深く詮索したらややこしくなりそうだからやめた。