「菫から聞いたんだけど、卒業式の日、先生に告白しようとしたんですって。
でも、先生が『それ以上、何も言うな』って言って、家に帰したそうよ。
……普通、卒業式が終わったらもうこっちのものだって付き合うところでしょう。
だけど、先生はそれをしないで頑なに公務員の倫理を守ったんですね」
そう言われると照れる。
確かにその通りだが。
「はい。私達は公僕として、信用失墜行為を固く禁じられています。
在学中の生徒と付き合う訳にはいきませんでした。
……菫さんが卒業するのを、ずっと待っていました」
ご両親は、ただ黙って俺の話を聞いている。
肯定も、否定もしない。
……だんだん不安になってきた。
三者面談や懇談会を数多く経験していても、彼女のご両親への真剣なご挨拶なんて、生まれて初めてだ。
どう考えても、不利な条件が揃っている。
でも、このご家族はちゃんと誠実に話せば解ってくれるはずだ。
今の彼女を慈しみ育てたのは、このご両親だから。
気遣いができて優しくて憎めないキャラクターは、この家で育まれた。
彼女が大事に想っている家族の理解を得られる人間になれるかどうか。
自信はないが、誠意をもって話すしかない。



