先生観察日記


ダメだって思ったのに、先生を責めていた。

これ以上ここにいたら、もっとひどいことを言っちゃう。


私のことを生徒としか見られないのなら。

ただの手のかかる教え子だったのなら、そっとしておいて欲しかった。



帰る!

と言いかけたその時。



先生が、ふわっと私の体を包みこんだ。

ジャージ越しに感じる、温かさ。

いつも頭を撫でてくれた先生の大きな手が、初めて背中に回された。


今度は、何?


「今日は4月1日。

やっと、言える」


耳元で、私の大好きな、ちょっと低めのよく通る声。


「卒業、おめでとう」


「……今頃遅いよ、先生」


「またネタになるけどな……。

卒業式が終わっても、学籍上は3月31日まで、卒業した学校の生徒だ。

俺の、生徒だ。

……だから、今日まで言えなかった」


先生の腕に、少しだけ力が込められる。