折り重なる瓦礫は大きく重い、人海では余りにも歯が立たず無力感が漂う。
散在する瓦礫の山、吹く風に土埃が舞い、其処かしこから煙が立ち上っている。
嗅覚を衝く独特の匂いが漂っていた。陽は間もなく沈む、急激に冷え込んでくる。
夜の帳は音もなく忍び寄り、立ち所に闇が迫りくる。
焦りと諦め疲れ切った人々は無言、顔面蒼白、表情が消え死神の様相を呈していた。
「助けてー、助けてー ! 」
再び声が聞こえた、その中には未だ幼い子供の声も混じっている。
確かに聞こえた、周囲の人々にも聞こえている筈だ。
だが誰一人として見向こうとはしない、それどころか全ての動きが止まった。
つい先程までの瓦礫と必死に戦っていたあの献身的な人々である。
一様に無表情で全くの別人と見紛う程だ。
薄暮の中、所々で木材瓦礫の焚火がゆらゆらと揺れ人々の横顔を映し出し、影も揺れる。