中枢神経系細胞の壊死は容赦なく続く。
死んだ脳細胞は二度と回復しない。
CTスキャンによる検査にて血栓に拠る梗塞が判明、直ちにt-PA注入による血栓溶解措置が講じられた。
当初当番医師の診断では顕在化する脳卒中の兆候は希薄で、その症状からギランバレー症候群(多発性根神経炎)の可能性も指摘された。
結果的にはM医師らの精査により明らかに脳幹梗塞の所見が示され、直ちに血栓溶解措置が講じられたのである。
一晩そして二晩、漸くヤマ場を越えた。
親戚や子供達も徐々に帰路に就き、女房と共に見守っていてくれた娘も三日目の朝この場を離れた。
二日にわたって殆ど食事も摂らず、女々しく泣き続けていた女房の顔は、腫れぼったく憔悴しきった様相であった。
その間M医師は、確信に充ちた明るい笑顔で語りかけてくれたそうである。