精霊達の棲家

「また、喧嘩かいな。ほなもう止めや !」
の一言で場は収まる。
膝枕、お袋の膝はたおやかな弾力があり、仄かに暖かい。
時が経つ程心地よく耳かきの擽(くすぐ)るような快感と相俟って、暫し夢の中。
終わりが近付く、耳かき棒の反対側の綿毛を軽く回しながらゆっくり手許に引き上げる。
最後に掻き棒をクルッと一回転、そして耳元で一息、
「フッー」で終了。
たかだか5~6分程度、されどその短い至福の時は、得も言われぬ桃源郷。
名残惜しくてお袋の膝枕から離れがたい、
ついつい「もう1回、もう1回 !」とねだる。
するとまた喧嘩。
中学生にもなった兄貴が、照れながらもそこに加わると、それはもう大騒ぎである。
お袋の匂いが鼻腔を擽る。
麹菌をヨーグルトに混ぜて発酵させたような、甘酸っぱい香りである。
そして真綿でくるまれた暖かな感触が、尾を引くように身体に残る。