精霊達の棲家

思わず走り出すが、何故か方角が違っていた。
逆方向だったらしい。
おかしいと気付き元来た道へ、
「おかしい ! 」
また違った。
少しパニックに陥っていたようだ、駈け出しては見覚えのない風景を目の当たりにしまた駈け出す、今度は行き止まりだ。 
パニックがパニックを呼び、其処が何処なのか見当さえつかない。
泣きながら、また駈け出す。
家並みが途切れ田園風景、街灯もなく新月の月明かりが辛うじて気配を感じさせてくれた。
遂に堪らず灯りの中に駆け込んだ。
二時間余り彷徨っていたらしい、泣きじゃくり嗚咽で言葉が出ない。
夕飯を御馳走になり、住所も言えぬままその家で寝入ってしまった。
その日親父とは連絡が取れず、お袋は中学生の兄貴とともにほぼ一晩中捜し回ったという。
その後駐在さんと隣人をも巻き込んで、夜が明けるまで捜索が続いたという。
夜を徹して走り廻ったお袋は疲労困憊、親父は不在その心労たるや如何許りであったろうか。