傷が比較的浅かったのは、瞬間的な無意識の反応ゆえの事である。
裏を返せば、この種の転倒に反応した反射神経は、壊死していなかった事の証である。
‘悪さ加減’を嘆くより‘良いとこ採り’にギャーチェンジすべきなのだろう。
思わぬところで、人生の機微を思い知った。

転倒時意識を失ったらしい、側頭部の衝撃は記憶にあるが、その後数分間の記憶が途切れている。
気が付き立ち上がろうとしたが、意識とは裏腹に脚が効かぬ、特に左足が動かなかった。
幸いその日は日曜日公園内には十数人居た、転倒時の物音に気付き、数人が駈け付けてくれていた。
その中にベテラン看護婦が、そして女房の知人も居た、不幸中の幸いとはこの事か。
人が来る前に‘ナリ’が顔をペロペロと舐め回していた。
そして合間に、3Kgの小さい身体を精一杯震わせ吠えていた。
恰も「早く来て!! 」と叫んでいる様に。