精霊達の棲家

危うくテーブルの角で頭をぶつけそうになった、間隔は5cm位であったろうか。
電話を取り左手で持ち右手指で119を押すが、左手は揺れ右手は震えているため、上手く押せない。
どうしても両隣に指が触れ掛からない、エラーを繰り返した。
バッテリー残量は3から2に変わった、焦りが募る。
電話を床に置き安定させ、左手で右手首を掴み右手の震えを抑えながら、119をプッシュした。
携帯電話は命の恩人であろう、もし手元になければ今の姿はない。
いか程の時が経ったろうか、漸く繋がった。

亀田病院救急救命センターへ運ばれ、処置室へ移されたのを微かに憶えている。
脳幹梗塞とのこと。
中枢神経系の細胞が時を競って壊死、連鎖が連綿と続く。
今夜・明日が山場と宣告され、取り急ぎ此の地まで馳せ参じ得る可能な親族が集まった。
女房はうろたえ一晩中泣き続けていたという。
ミノリは動揺を堪え気丈にも、医師との対応・状況判断・以降の為すべき事・その場のコーディネート役をも果たしていた。