毎年一度か二度雪が積もる。
ほんの数センチだが大地の殆どを真っ白に包み込んでしまう。
畑に積もった新雪のカンバスに、見慣れぬ足跡が二種類、一つは野ウサギか。
眼下の長狭街道が鴨川市街に近づくにつれ、一面の白からまだらに変わりやがて白はフェイドアウト。
山間を縫うように一陣の風が吹くと、杉の垂れ下がった枝から小さな雪庇がドサッと落ちる。
普段とは全く異なる情景である、稀な事ゆえ殊更に風情がある。
その日は小さな雪だるまを創り、薪ストーブの揺らめく炎の競演を眺めながら、
終日雪見酒で過した。