精霊達の棲家

葬儀社の進行役が出棺を告げ、参列者を促す様に覆蓋の両端を持った。
聴き憶えのある声がした、何やら唱えているようだ。
腹の底から否遠い空間の彼方から微かに聞こえる。
「お袋・・・、まさか・・・お袋」
その時娘のミノリが
「ユキナとシュンが、どうしても‘じいじ’とお話しをすると言っているので・・・」
と棺に駆け寄った。
ミノリもユキナも眼は真っ赤、止めどなく涙が流れ顔はグシャグシャ。
ユキナが
「今じいじの眼が動いたよ」
と興奮気味にミノリに訴えた。
 間髪を入れずシュンの声が、けたたましく会場に響いた。
「じいじが泣いてるよ!!・・・、本当だもん !! 」 
驚くほど大きな声だった。
女房とミノリはその声に驚き、慌てて棺の中を覗き込んだ。
納棺の際確かに瞼を指で押し当て閉じた筈だ、指の感触もそれを憶えていた。
僅かな弛緩ゆえ気にも留めなかったが、子供の眼にはその僅かな変化が、見逃すことが出来ない程大きな事柄に思えたのだろうか。