痺れ感覚が誤った認識を生み出しているのだろうか、不快さが突き上げてくると思わず‘ブルッ’と小震いする。
夜更け三時ごろ床に入ったが、寝付けない。間も無く窓外が白み始めてきた。
乳白色の光が室内を柔らかく包む頃、はや蝉の声が聞こえた。
ヒグラシの甲高い鳴き声と、もう一種ジイジイと耳鳴りに様な鳴き声が聞こえる。
ニイニイゼミだろうか。
チチィチチィと啼く鳥は木から木へ飛び交っているのだろう、次第に遠のく。
生き物たちの朝は早い、里山の一日は既に始まっていた。
切妻の内壁に掛けてある、色鮮やかなタイ民族のお面が、朧な陰影を浮き立たせ妖しく笑みを泛べていた。
眠気は全くない、布団に全体重を預け身を任せていると、脳梗塞の感覚的な障害をほとんど意識することはない。
全身を貫く麻痺と痺れ、あの息苦しく不快感に満ちた実体のない幻覚。