精霊達の棲家

何よりも外気の感触が心地良かった。
狭い構内から周辺道路へと歩を進める。
直ぐ後ろには勿論療法士のW氏が介添人として付く。
気持ちはリラックス状態にも拘らず、身体は堅い。
妙な気分だ。
発症以来、陽光を浴び・外気に触れ・火照る道路・を歩くのは初めての体験である。
顔面が多少強張り、口許が歪み、首が指人形の様にカクッ・カクッとぎこちなくブレる。
病棟内とは様相が異なり足許が悪い、眼に差し込む陽光は非常に強く眩しい。
二~三百㍍歩いただけで足が気(け)だるくなってきた。
特に左足は感覚の鈍さと痛みが厭気を誘う。
二日目・三日目と続けると、慣れもあるのか精神的にも楽になって来た。
県道側を歩くと収穫間近の稲穂が頭を垂れ、時折吹く弱い風に軽やかにそよいでいる。
外見よりも寧ろ内面の感覚的なフラつきが殊の外煩わしく、遊歩に興ずる心境ではない。
三十分余り意外と長く感じたが、その都度タップリと掻く汗は思いのほか心地よい。