「記憶、なら見えませんし、撃てませんよ」
パンを齧りながら、合間にそう告げられた。
「そうなんだ?」
「だって、考えてもみてくださいよ。
いきなり風が吹いて、
辿るべき軌跡から逸れてしまったとして。
間違って関係無い、誰かの記憶まで消しちゃったら、面倒じゃないですか」
それは、面倒で済ませる事なんだろうか、と、そんな疑問を浮かべたりしてみたけど、どうでもいいか。
俺も弁当を食べる。
「まあその記憶に関して、恐怖とか何か、
見える位の強い感情を持っていれば、
それを消す為に、結果的に消える事はありますけど……」
食べ終わったパンの袋をぐしゃぐしゃと丸め、ためを作ってから、再度、三枝は口を開いた。
「先輩にそんなの、見えませんもん。無理ですね」
そう言われ、自分でも納得する。
腕が落ちていた時は確かにビビったけど、
見せられる彼女の記憶に、怖い物は何一つない。
殆どすべてが家族、いや、彼女と兄との物だ。
その記憶は、とても優しい。



