鞄を渡し、ようやく帰路へ着こうと玄関へ向かった。

すると、丁度靴を履きかえている三枝と出くわした。


「先輩、どこにいたんですか」

「それ、こっちの台詞」


「言ってる意味が違いますよ」

三枝はそう苦笑し、続けた。


「ずれた所にいたんなら、
俺にどうこう出来る訳無いじゃないですか」

ずれた所、と言われても。
さっきまで俺たちは、
学校だけれど、学校じゃない場所に居たと。
彼はそう言いたいんだろうか?


それにしても、

「どうして何かがあった事を知ってるんだ?」


「玄関にも1人、倒れていたんですよ」

……最初の、1人だったんだろうか。
そういえばいつの間にか全員が廊下に集まっていた。

三枝が、その生徒をそこまで連れて行ったんだろうか。


まあ、どうでもいいか。

「もう済んだ事、なんだよな?」

「もう変な話、しないでしょうからね」

それはあの話を、もう2度としなければ大丈夫という事か?
俺は詳細を知らない、その話。

……さすがに懲りただろうから、
やっぱり心配はいらないんだろう。

どこかの誰かが同じ話をしない事を祈り、
俺も帰ろうと、靴へと手を伸ばした。