だって、殺せる訳がない。

その手が模する物が銃器だとしても、
何が出来る訳でも無いじゃないか。


手は、手。

体の一部。

絞める事と爪以外に、
凶器には成り得ないと思う。


どんな酷い冗談だ。と、
後輩を見上げると、彼もまた笑っていた。


「ええ、この手で。
殺せるんですよ、見えないモノが」


そう言いながら、手は下げられて、
俺の心臓の辺りへと向けられた。