もう女は居なくて、
誰かの影が、床に背中をついたままの俺に被さる。
誰だっけ。
「……永?」
口から自然と名前が飛び出た。
永?永って誰だ。
どこかで聞いたような……。
呼ばれた相手は、
少し驚いたような顔。
誰かは知ってる。知ってる筈なんだ。
……あ、そうか。
コイツの下の名前だ。
「……三枝」
三枝だ。
でもなんで、急に名前が先に出てきたんだ?
体を起こすと、近くには人形が転がっていた。
人形と言っても、ぬいぐるみとの中間のような、人型をした、中に綿の詰まってそうなのっぺらぼうな人形だ。
女が掴んだのは、これだろうか。
すぐ隣に落ちていた物ではなく、
いくつか転がっていた内の1つを手に取った。
それを眺めていると、三枝が言った。
「どうして人形を置いていたのかというと
子どもの身代わりなんですよ。
陽奈子さんの部屋に置いて、
周りにもいくつか置いて……で、余ったのをここに残しておいたんです。
だけど先輩の方が良かったみたいですね」
いやあ、誤算でした。と笑う三枝。
「そんなに連れてかれやすいなんて」
まだ笑う三枝。
笑い事じゃない。
俺はまだ、頭がなんか気持ち悪いのに。



