……何でそんな、端に置いたんだろう。
俺か?……俺だろうな。
扉のすぐ近く、
つまり鏡と、女のすぐそばに、鞄はあった。
まさか来るなんて思わなかったから。
だから適当に、出る時に持ち出しやすい位置に置いたんだっけ?
鏡はある。大丈夫。
息を詰めて手を伸ばした。
持ち手紐に指をかけ、
ゆっくりと引き寄せていく。
動く鞄には気にも留めずに、
女は鏡を見つめ、子に呼びかける。
――無事に鞄が手元に来た。
携帯を取り出し、三枝へかける。
数コール後に繋がり、相手の声が聞こえた。
『何かありました?』
「……女が、こっちに居る」
ひそめただけのつもりの声は、
緊張による喉の渇きのせいか掠れていた。
だけどちゃんと伝わったようで、
すぐに来るとの返事を聞き、電話を切った。



