こんな人を、俺は知らない。
着物姿の女の人が笑っている。
「……開けちゃいけないんだった」
瞬時に後悔が湧いて出て、思わず呟く。
「いいの。いいの。いいの。
さあおいで」
女は俺の声にこたえている。
だけど。
女の視線は俺に向いてはいない。
足元の、鏡を見ている。
そこからジッと、動かない。
……女の視界は、
その鏡に映るだけらしい。
どこかにいると信じている、
自分の子を探しているんだろう。
三枝は、陽奈子さんの所にいる。
女が何故だかこっちに居るんだと知らせないと。
携帯……鞄の中だっけ?
服のポケットを探っても何も無い。
辺りを見回すと、見慣れた色が目についた。



