見えないモノと、指の銃。



陽奈子さんは、鏡を置き忘れたその日以来、加々美家に住んでいるそうだ。

それは、追い返せる唯一の鏡を、
この家から出してはいけないと言われているから。

そしてその鏡も、今朝とうとう壊れてしまったらしい。


置いてある場所に向かうと、
土台だけになった、三面鏡の姿見と、
そばには箱があって、破片はその中に収められているという。

「少しずつ割れて欠けていっていたんです
段々落ちる数が多くなって、
遂にはこの有様で……」

残っていた部分が今日一気に剥がれ落ちたらしい姿見からは、綺麗にすべて無くなっている。


「自分たちのした事の負い目がありますし
生きている人間に危害は無かったから、
今までは何もせずに来たんです。
だけど陽奈子は家の者ではありませんから」

もう終わらせる事にしたのだと、邦明さんは言った。

だけど、身内では無いから。
どうにかしたいと願うのは、その理由だけではないんじゃないだろうか。

少しの時間見ていただけで分かる。

邦明さんが陽奈子さんを見る目がとても優しから。
対する彼女の顔からも、大事にされているのが窺える。