壁の前を確かに誰かが通った。
だけれど足音も何も聞こえない。
そして鏡に映る場所を通り過ぎたなら、
こちら側へ向かってくるはずなのに。
……どこにも、それらしき姿は見当たらない。
三枝へ視線をやると、
彼も同じ場所を見ていたようで、視線は鏡に向かっていた。
そして次に、窓へと向かう。
追ってみると、次はそこに。
鏡よりも広いから、さっきよりも長くその存在を確認できた。
髪を束ねた女の人が、ゆらりと何処かへ向かっている。
速度は遅く、何かを探しているようだ。
彼女を目で追っていると、見えなくなる寸前、こちらを見たような気がした。
俺は慌てて、目を逸らす。
「何か……見えました?」
俺たちの様子を窺っていたらしい秀明さんが尋ねた。



