「母さん!」
道を歩いていると、
前に誰かが立ちふさがった。
そして、母親を叫ぶように呼ぶ。
後ろに居るんだろうか、と、
道をあける感じに振り返りつつ端に寄ってみた。
そして見えた、歩いてきた道には…………誰も居ない。
新手の変質者だろうかとか、嫌な予想をしつつ、再び前を向いた。
そこには男が1人。
彼の顔は、感動のご対面!みたいな表情で、目を潤ませてもいる。
……予想は外れますように。
そう願ったのもつかの間、男は再び叫んだ。
「母さん!」
その視線の先は、どこから見ても俺にしか向いていないし、道は狭い。
通してくれそうにないから、回避不能。
仕方がないから応対してみる事にした。
「……誰ですか?」
そう尋ねると、嬉々とした声で答えが返ってくる。
「あなたの子どもです!」
……変質者かどうかは置いておいて、
とにかく変な人だ、この人。