そこでは最近、誰かが死んだらしい。

それも、以前から数えると何人も。


何かの建物が作られるはずだったそこは、
まだ骨組みも出来ないままで放置されている。

少しずつ手を付けられはしているけれど、
その度に事故が起こるから、中々進まないとの事だ。


「噂じゃ、地面に誰か埋まったままらしいですよ」

「そんな訳無いだろ」

噂はどんどん大げさになりながら広まる物だ。

「じゃあもう1つの方。
上から何か重い物が落ちてきて、
それの下敷きになって死んじゃった人がいるんですけど、
その人の指がどこかに飛んで行って、
それを拾って持ち去った人がいるそうですよ」

「へー」


「それで、誰かを道連れにしたいだか、
指をちゃんと体と一緒にしたいだったか、
何だかあるらしいんですよ!」

「あっそ」


「つまんないなー、
もっと怖がってくださいよ」

「そんな事言ったって、
怖がる要素がどこにある?」

噂は曖昧だし、
ここは、ただの薄暗い工事現場だ。

落ちて来そうな鉄骨も何も見当たらないし
転落事故の起こったらしい中は、
シートが張り巡らされていて見えない。

他には、何も無い。

怖がれと言われたって困る。