学校からここまで走ってきたと言うこともあってか、足が痛かった。

情けないくらいに乱れた息は、過呼吸みたいだ。

「――違うって、言ってよ…」

器に向かって呼びかけても、答えてくれる訳じゃない。

「黎ちゃんが不倫する訳ないよね…?

違うよね?

間違いだよね?

中條ってヤツが勝手に言ってるだけだよね?

だとしたら、あいつはとんでもない被害妄想の持ち主だね」

答えてくれない。

何も言ってくれない。

それが事実なんだってことが、痛いくらいに伝わった。

「――蓮ちゃん…」

わたしは、どうすればいいの?