「じゃあ、頑張れよ」

大学の前で蓮ちゃんがバイクを止めた。

大学はわたしたち2人が通う大学じゃない。

蓮ちゃんの姉・黎ちゃんが通う大学だ。

わたしは今日から黎ちゃんとして大学に通うのだ。

「蓮ちゃんも頑張ってね」

わたしは蓮ちゃんのバイクから降りると言った。

「帰りは迎えに行くから待ってろよ?」

ヘルメットの中で蓮ちゃんが笑った。

迎えに行くから待ってろよって…蓮ちゃんったら、自分が何を言ってるのかわかってるのかな?

何故なら、彼はほとんど無意識で甘い言葉を言うからだ。

蓮ちゃんみたいな人のことを“天然”って言うんだろうなと、わたしは思った。