「だって、カチューシャが見つかんなかったんだもん」

困ったように笑う姉の頭には、ビジューつきの紫のカチューシャがあった。

刺繍がキラキラと光っているそれは姉のお気に入りだ。

「全く、他のをつけりゃいいって言う話だろうが」

皮肉混じりに言った僕に、
「今日はこれがいいって言う気分だったの!」

姉がにらみつけるように視線を向けてきた。

「蓮ちゃんったらホントにわかってないんだから、ねー」

水萌がそう言って姉に同意を求めた。

「ねー」

姉も同意をしたもんだから、
「何だよ、俺だけ悪者か」

僕はふてくされて、横を向いた。