視線を向けると、姉の器…だけど、笑っているのは水萌だ。

「料理を教えてくれたし、優しいし、映画にだって誘ってくれて…蓮ちゃんのお姉さんを助けるのは、当然じゃない。

わたしは、当然のことをしたまでだよ?」

「全く、偉そうに言ってんじゃねーやい」

僕は照れくさくなって、水萌の髪をクシャクシャにした。

「ちょっと、蓮ちゃーん。

わたし、病みあがりなんだから」

「腕に擦り傷を作っただけのくせに何をえらそうに言ってやがる」

周りから見れば、僕らの幸せな光景だ。

僕と水萌がじゃれあって、姉が微笑ましそうにみているその光景を思い出した。

けど…今の僕たちに足りないのは、姉ただ1人だけである。