「――ッ、うっ…!」

唇を動かすことができない。

蓮ちゃん、助けて…!

蓮ちゃん…!

蓮ちゃん…!

蓮ちゃん!

唇が動かない代わりに、心の中で何度も彼の名前を呼んだ。

せめて手を動かそうとしたけれど、それすらもかなわなかった。

蓮ちゃん、助けて…!

だんだんと遠くなって行く意識に、頭が働くことができない。

重く、深く沈んでいく躰に逆らえない。

もうダメだ…。

蓮ちゃん、助けて…。

最後に見たものは、革靴の先だった。