蓮ちゃんを傷つけたから、中條が許せない。

腕の中で声を殺して、蓮ちゃんは涙を流していた。

わたしは、そんな彼を抱きしめることしかできなかった。

――弟が憎い

中條の口から聞かされた黎ちゃんの気持ちに、蓮ちゃんは傷ついた。

大好きで、いつも慕っていた黎ちゃんが、自分のことをそう思ってたからだ。

もし…それが中條の作り話だったら、どんなにいいことなのだろうか。

でも、事実だった。

「――蓮ちゃん…」

もう、許せなかった。

別居しているとは言えど、妻がいる。

なのに、何で黎ちゃんばかりにこだわるの?