ドアが開いたかと思ったら、そこから誰かが出てきた。

「遅かったじゃないか、黎」

その声に、僕の背筋がゾッと震えた。

「――中條、先生…?」

水萌が震えている。

目の前にいるその人物は、まさに中條だった。

姉の通う大学の先生で、不倫相手である。

その彼がどうしてこんなところにいるのだろうか?

しかも、何で家の中に入っていたのだろうか?

「今日、学校にこなかっただろ?

ケータイにかけても出てこないし…だから、きたんだ」

えらいだろとでも言うように笑っている中條は、何を考えているのかわからない。