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5年前





まるで血走った眼のように、赤い月が夜の黒を照らしていた。






丁度京を巻き込んだ激しい戦のほとぼりが、ようやく冷めてきた頃だった。






私が陰陽師の仕事の為にはじめて京に来たその日、森の入り口で死にかけている男を見つけた。






浅葱色の羽織を着たその男は、ただ死にたくないとばかりに刀を握りしめていた。