「キツネ、私を乗せて南へ飛びなさい。なるべく急いで。」






主様は聞き込みを続けた後、私にこう告げた。






「分かりました、主様。」






私は己の本来の野孤の姿をとり、主様を背に乗せた。






右耳に付いた陰陽の装飾が、風になびいて煌めいた。






私は四肢を動かし、夜の京の空を駆けた。






風とわずかな空気の寒暖で方角を知る。






主様の指示通りの、南へ。