私と翔さんは、蘭に声を下げるようにジェスチャーをした。



「悠?“はる兄”って、貴方?」



けど、悠さんのお客さんにも丸聞こえ。

私は翔さんを見た。



「他人のフリして…」



そう小声で言われて、私は寂しいながらも頷いた。



「悠の妹の蘭です。嫌な話が聞こえてしまったようなので、ピンドン、ご馳走させて頂きますよ?」



「…結構よ。でも悠、彼女が居るのね。その方は、私より美人なのかしら?」



蘭とお客さんに火花が散って見える。

蘭を止めようと、体勢を整える。



「――彼女なんて、居ませんよ。
カオリさんの他に、美人な方を、お見掛けした事もありません」



ーーカラン…ッ

私のグラスが、蘭がテーブルを叩いた事によって倒れた。