「うん」



狭い為、親族席と客席が近い。



「まだ、泣いてないんだな」



「ん?」



「正直、海は泣くと思った。
泣いて泣いて…“ここに残る”って、言うと思ってた」



「…うん…」



昔、泣き虫で。

母親が大好きだった私が泣かないなんて不思議。



「本日は妻の為に、たくさんの方々にお集まり頂き、ありがとうございます。
妻と出会い40年。今日、娘に言わなければいけない事があります。両親しか知らない、ある事実を…」



「え…?」



ボーッと座ってた私の耳に、父親の申し訳なさそうな声が届いた。

賢介君を見ても首を傾げた。