落胆しながら降りた私に、悠さんがクスッと笑った。



「ほら」



差し出された左手。

首を傾げると、「早くしろ」と言われた。

慌てて握ると、満足そう。



「俺、今まで彼女と手ぇ繋いだ事ねぇ」



「“彼女”…」



「海が初めて」



…嘘ぉー!

彼女に含まれてるの?



「鈍感でもわかったか」



「…わかっちゃいました(笑)」



頬が緩んだ。

繋いだ手に力が籠る。

悠さんの手は、大きくて温かい。

冬は私の手袋になりそう。



「入る前に、一言だけ良いですか?」



「何だ?」



「大好きです」



甘いマスクの悠さんも。

クールな悠さんも両方。