ただ、悠さんのプールで見せた笑みが見たかった。

“嘘だ”と、言って欲しかった。



「母さんな、いつも言ってた。
“海は大丈夫かしら”。“卒業してくれるかしら”って。
海、ここで躓くなよ。卒業するまで頑張れよ」



父親は、私の頭を撫でてから立ち上がり、和室へ入って行った。

小虎さんに連れて来られた祖父母が、リビングに来た。

お祖母ちゃんがお茶を淹れてくれて、お祖父ちゃんが私の隣に座り、手を握ってくれた。



「神様は、間違っちゃったな。
祖父ちゃんより先に、を先に呼んでしまった」



お祖父ちゃんに、悲しい事を言わせてしまった。



「違うよ。お祖父ちゃんを呼んでも、間違ってたよ」



誰かが居なくなるなんて、考えてもなかった。