「お礼は後でちゃんとさせて頂きます。これ、俺の名刺です。後で連絡を頂けたら幸いです」



蘭に名刺を渡し、私の腕を引っ張って歩き出す小虎さん。

裏道に、キーを付けっぱなしで停まってた軽トラに乗り込み、お昼まで居た地元に帰る。

お祖父ちゃんやお祖母ちゃんの世代位の実話を基にしたドラマを見た事がある。

黒い縁取りのある手紙は、訃報の報せ。

それを見て、家族の訃報に愕然としてた主人公。

私はなり変わったような気分だった。

実感が湧かず、涙も溢さない私に、小虎さんは何度も私を見る。

私はただ、遠くを見つめていた。