ーードサッ

ブロック壁に押し付けられた。

ニヤリと笑われ、下を向けば顎を持ち上げられた。



「よーく見ておくが良い。彼氏が殴られる姿をな」



“彼氏じゃない”―…。

否定しなきゃいけないのに、恐怖で完全に声が出なくなってしまった。

口を開いて、何かを言う度に、空気だけが抜ける。

“ナツホさんも申し訳ありません”―…
お客さんに頭を下げた悠さんを思い出すと、涙が溢れた。

悠さんは私1人で動かない。

お客さんが優先。

…私、死ぬかも知れないね…。

そう思うと、両親の顔が甦り、涙が増して行った。