目の前には、17時20分発の新幹線が、10分前だというのに、時間調整で停まっていた。



「自分で決めたんだ。親の為に。
だから謝るな。精一杯、悔いなくやれ」



ギュッと抱き締められ、私は上を向いた。

会えない時間の分も、ベルが鳴るまで、キスをした。

この街からこの時期、この時間に、駅へ来る人は居ない。

柱に隠れた場所でのキスは、乗客、運転士さんたちにも見えない。



「またね、悠…」



「頑張れよ」



扉が閉まり、届かない声で呟いた。



「ありがとう…」



悠に出会ってから、何度、思っただろう。

悠が、彼氏で良かった。