見送りを済ませ、私はお泊まりセットでごちゃごちゃしてる鞄の中から携帯を出した。

窓の前に立ち、月を見上げながら、小虎さんの携帯を鳴らす。



『もしもし』



「お久しぶりです。海です」



『おー。どうした?』



小虎さんの声が疲れてる。

仕事は楽しそうだし、こんな声を聞いたのは、まだ私が小学生の頃だった気がする。



「うん…ゆっちんと会ってね?
お父さんの体調が悪いんじゃないかって聞いて…」



『……』



小虎さんは無言になった。

「小虎さん?」と、名前を呼ぶと、鼻を啜る音が聞こえた。