昼過ぎ、私は寝てる悠を起こさずに帰る事に。



「海、大丈夫?」



玄関を出ようとした私に、蘭が心配そうに訊いて来た。

顔に何か、出てたのだろうか。

涙の痕が、残ってたのだろうか。



「大丈夫だよ?」



笑って、ドアを閉めた。

…ごめん、蘭。

親友なのに。

何も言えなかった私を、許して欲しい。



「やっぱり、泊まってた?」



角を曲がった私の前に、昨日、会った男性が現れた。

待ち伏せされてたらしい。



「何ですか?」



夢だと思いたかった現実。



「俺、日暮樹理ーヒグラシジュリー。
澤井繭ーマユーの元カレな」



私は“繭”さんという人がわからず、首を傾げた。