「相手は」



「私の実家で作ってる【さくら】をメインに使ってくれてる、居酒屋チェーン店の和倉ーワクラー酒房(しゅぼう)さんの息子じゃないですかね?
高校の先輩で、仲良くもしてましたし」



和倉賢介ーケンスケー。

二つ上で、幼なじみみたいなもんだった。

家族でだけど、旅行にも行った仲でもある。



「そうか」



悠さんは私をチラッと見てから、口を閉ざした。

バーに着くまで無言で、私はただ1人、ネオン街を眺めていた。

翔さんに声を掛けられなければ、知らなかった景色を。



「着いた」



ビルの裏側の駐車場に、車は停められた。

車から降り、裏口からバーが入ってるビルに入る。