早足で私が向かった先には、



「樹里菜……」



私の姿を見つけるなり、抱きしめる彼。



イサムとは違う温もり。



イサムとは違う肌の感触。



傷つけてしまったイサムの気持ち。



裏切ってしまった想い。



私はきっとイサムを忘れることはできない。



だからこそ、私は笑顔でいなきゃいけない。



だって、これが求め選んだ道だから。



もう過去は振り返らない。



そう自分に言いきかせながら、



私は彼の腕の中で目を閉じた。



次の瞬間、重なる唇。



「幸せにして……」



キスの合い間のつぶやきに、



「ああ、誰よりも……」



彼はそっとささやくように応えた。






☆~・☆END☆・~☆