意を決して教室に入るとまた昨日のように仲本と目が合う。


すると少しだけ笑ったような気がして、どうしてか恥ずかしくなった。



「おはよーございまーす。藤原さん」


席まで行こうとしたら、仲本がそう大きな声で挨拶をしてきた。


仲本のまわりにいる男子が
一瞬静まり返ったけど、
仲本につられて挨拶をしてきた。


私は一瞬なにが起こったのかわからなくて

その場に立ち尽くしてしまった。


「お、はよ…」


「きゃーっ!!!!」


せっかく挨拶したのに、その悲鳴で私の声はかき消されてしまった。


もちろん声の主は西村郁。


「なにっ!?かおりんちょー可愛いっ!!!どうしたのっ!?やばいやばいやばいっ!!」


ぴょんぴょんとうさぎのように跳ねる姿を見ていると


おもわず笑ってしまった。


「えっ?どうしたのー?っていうかそれ愛想笑いじゃないよねっ!
郁感動~っ!」


「郁」

「へ?」


そう、下の名前で呼んでみたくなったのだ。

こんなふうに誰かに話しかけられたことも、可愛いと言われたことも

今までなかったから

だから、本当に
心の底から嬉しかった。


「い、いいいいま郁って呼んだ!?」


「いけなかった?」