「な…」


「郁が喧嘩売ってるとか思ってんだろ、どうせ」



「そりゃ…あんなこと言われたの初めてだし…」


「でもさ、郁があんた以外に話しかけてますかー?って話だよ。」


「え?」


「とりあえず、それあんたじゃないだろ。

その髪も、制服も。


まあ、今のその顔だけはほんとのあんたなんだろうけど」




「あのさ、なにが言いたいのか全然」


「あー、言いたいこと?

とりあえずそれ似合ってないってこと。

あとはあのブス共と
仲良しごっこがしたいわけ?ってことかな

俺もよくわかんねえや。




「………」


この男は人の話を最後まで聞こうとはしないのだと、今の短い会話でわかった。


さっきから私の話を遮ってまで話そうとしてるし。



「鞄返すから、そのかわり」


「なに?」


そして通学鞄を手渡しながら言った。


「郁と正面から向き合ってやってくれよ。

あいつかなりクセあるけどさ。

じゃあね」


それだけいうとひらひらと軽く手を振って立ち去ってしまった。


「なに、あれ…」