号令のあと、西村郁はすぐに
教室から飛び出していったので
話をすることもできなかった。
すると、後ろから声をかけられた。
「藤原さん、大丈夫?
あんなふうに言われて可哀想。
みんなも言ってるよ」
その子は、たか子…ではなかった。
でもたか子の友達なのだろうか。
それにしても
なんなんだろう、この不快感。
みんなって誰?
あなたたちと話してるのって
たかが数人でしょ?
「あ…うん。全然大丈夫。なんかわざわざありがとう」
そして無意識のうちに
愛想笑いをしてしまう自分。
「ほんとに?
あんまり西村さんとは関わらないほうがいいと思うよ。
ほら、あの子って派手だし…」
「そうそう。
それにあの子の友達って
うるさい男子しかいないよね」
いつのまにかもう一人の
子も加わっていた。
私はこの子たちの
感情の名前を知ってる。
嫉妬だ。

