不器用な君と不機嫌な私


「えーっと…じゃあまず俺の自己紹介だな。
これから二年、このクラスの担任になった広瀬あきらだ。
よろしく。」


改まってそう挨拶すると、
広瀬先生は少し照れたように
笑った。


このクラスには、広瀬先生を知っている生徒が多いようだった。

挨拶のあとに、派手な男子たちが大きな声で笑いながら
拍手を送る。

その中には、キョンという男子も入っていた。


「よろしくなー広瀬ー!」


「広瀬じゃないだろ、広瀬先生だっつの。仕方ねえなあ」


そんな騒がしくなった教室も、広瀬先生が

じゃあ話聞けよ~


と言うと、すぐに静かになる。


本当にこのひとは生徒から気に入られているんだと、すぐにわかった。



「よしじゃあ始業式だな。全員体育館まで移動~。」


そう言って手を叩くと
生徒たちは素直に教室から出ていく。


「キョン!」


「ん?」


「一緒に行こうよーっ」


「は?なに、ガキ?」


「意地悪ーっ」


そんな会話が聞こえてくる。

キョンという男子は、冷たく言い放つけれど

結局は西村郁と肩を並べて歩いていた。



正直、このクラスでやっていける自信なんてなかったけれど



教室の鍵を閉めている
広瀬先生を見ると
なぜだか根拠のない自信が出てきたのだった。